Ich verstehe nicht.

冷静と情熱の間を表現できないアラサー

店の雰囲気は客が作り出すもの?

ある日のランチタイムにある某有名牛丼店へと向かった。
その店の前は何度も通ったことがあったが、入ろうと思えなかった。
その牛丼店はあるルールがあると言う。
おそらくピンと来る方も居るだろうがそのルールとは以下である。

•携帯電話使用禁止
•イヤホン禁止
•両替は断られる
•注文は店員のババアがお茶を持って来るまで待つ
•私語禁止
•つゆだく頼むと怒られる

これを聞いただけでも一般人は行きたいと思う心は削がれる。
しかし、好奇心旺盛な先輩にたまたまこの牛丼店の話をした所、どうしても行きたいというので仕方なく行くことにした。しかし、この先輩、火にわざと油を注ぐのが好きな人として社内でも有名だ。
このまま牛丼店に入ったらわざとルールを破り、仮に店員に「今すぐ出て行け!」と言われても店員に食ってかかっていくに違いない。

「じゃあ先輩、どうしても行きたいと言うならインターネットで調べたルールを破らない事にしてください」と。

渋々、先輩の了承を得てから、店へ行くまでに両替が無いように小銭とお互いに店内ルールを確認しながら店へと向かった。

一日一度の楽しみであるランチまでの道のりがこんなに辛く苦しいと思う時間は初めてだった。

店に着くと先着が食券を券売機で買っていた。
さっと後ろに並び、黙った。
店の前に来たら自然とさっきまでの笑顔と会話が俺らにはなかった。
すると先輩は何かに気づいたようで僕の目を見て小声でこう言った。

「おい…5000円、1万円、両替しますって書いてあるぞ…」

本当だ。1000円札投入口の上に書いてある。
両替しないのはルールじゃなかったのか…?
ポケットに入れた小銭が握った手で汗ばんでいた。

僕らは三人は行く前に打ち合わせをし、同じものを食べて同じタイミングで店を出ようと約束した。
先に決め事をしていないと私語禁止の店内では混乱を招く。
もし一人でも食べるのに時間がかかって先に食べ終わった人が残っていようものならきっと怒られるだろう…

それから席へ案内された。
先輩が食券を先に出さなかったのを見てホッとした。
お茶と同時に食券を取りに来る店員のババア。
三人は目を合わせ「こいつが元凶か…」と。
店員は僕らに「三つとも並ね」と話をして来たが三人とも声が出なかった。
普通の定食屋なら相槌位は打っていただろう。

それから会話もなく店内の様子を見渡した。
先輩が何かに気づいたようで僕を肘で小突いて合図を送った。
スマホを見ながら牛丼を食べている。
しかも一人じゃない。
確かに店内には「携帯電話通話禁止」と張り紙がしてある。
スマホ見ながらご飯食べるのは行儀が悪いがどうやら店員が怒る気配は無い。

そろそろ着丼かという所で自分の胸ポケットの会社携帯が震えた。
くっそ…こんなタイミングで電話かよ…と思いながら目の前で丼を置こうとしてる店員の前で携帯は開きづらい。
ぐっと我慢して味噌汁を啜った。

先輩はカラになった湯飲み茶碗を見ておかわりしたそうにいた。
店員に声をかけられずにいると「新しいお茶持ってくるからね」と先に店員が気づいた。
勝手にお茶のおかわりも出来ないと思っていたが店員が気づいてお茶を持ってくるとはなかなか配慮がある。
長年同じ場所で店を構えてるだけのことはある。

それから牛丼を食べ進めるとランチタイムと言うこともあり、客がどんどん来る。
しかしみんな静かに黙々と牛丼を食べている。
スマホをいじりながら、またある人はイヤホンで音楽を聴きながら牛丼を食べている者もいるが一向に店員が注意する様子はない。
中には店員がお茶を持って来る前に自分自らお茶を取りに行く者や
券売機でチケットを買った途端店員に渡そうとする者も見かけた。
しかし一向に店員は怒る気配がない。
おかしい。

三人同じタイミングで牛丼を食べ終わって店を出る時も
店員は笑顔で「ありがとうございました〜」と挨拶してくれた。

店を出てから三人は話始めた。

「言ってたことと違う。」

以前だったら怒られたのかもしれない。
暗黙のルールとはいえ、インターネットで調べれば事細かにルールが書いてある。
今の時代、気になった飲食店はスマホで調べてから行く人も少なくないだろう。
店舗の入れ替わりが激しい中で長いこと潰れないで存在するのは
やはり常連が足繁く通うからなのだろう。
その中で、店員が注意した事も有っただろう。
とにかく思ったのはこのルールは店が作ってるんじゃなくて、常連客が通ってるうちに出来たルールなんだろう。
でもなんとなく思ったのは、店員はこんなルール無くてもいいと思ってるんじゃないかなと。

でも僕は思った。
次に牛丼が食べたい時は気楽に食べれる吉野家でいいと。